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ノタック資料室の古書紹介①

今のウランバートルと、昔の都市づくり

ウランバートルは、ここ数十年で大きく姿を変えました。 ウランバートルに長く住んでいたバートル叔父さんでさえ、 今の街では道に迷ってしまうほど、昔とは違っているそうです。

高層ビルが増え、道路が広がり、新しい住宅地や商業施設が次々に建てられていく現在のウランバートル。 その変化を思うと、1972年に刊行された Д. Майдар『Монголын архитектур ба хот байгуулалт』 は、今読む意味のある一冊だと感じます。

この本には、モンゴルの住居、寺院、古代都市、そしてモンゴル人民共和国時代の都市建設がまとめられています。 今のウランバートルを見る前にこの本を開くことで、 ウランバートルという都市がどのように形づくられ、 どのような考え方で建設されていったのか、 その始まりの頃の様子を少し知ることができるかもしれません。

ノタック資料室の古書紹介①

モンゴルの建築と都市をめぐる二冊

Д. Майдар『Строительство в МНР』と
『Монголын архитектур ба хот байгуулалт』

ノタックには、少しずつ集まってきたモンゴル語・モンゴル研究・文化資料があります。 古書店や古書市場を通じて出会ったもの、譲り受けたもの、寄付されたものなど、 資料がやって来た道はさまざまです。

これから少しずつ、ノタック資料室の古書や資料をブログで紹介していきたいと思います。

第一回として紹介するのは、モンゴルの建築と都市に関する二冊です。 どちらも Д. Майдар による1972年の資料で、 ロシア語版とモンゴル語版をあわせて見ることができます。

ロシア語版『Строительство в МНР』

一冊目は、ロシア語で書かれた Д. Майдар『Строительство в МНР』 です。 日本語にすると、「モンゴル人民共和国の建設」という意味になります。

茶色の布表紙に金色の文字が入り、とても落ち着いた雰囲気の本です。 表紙には余計な装飾がなく、著者名と書名、そして幾何学的な金色のマークだけが置かれています。 その静かな表紙からも、社会主義期の専門書らしい重みが伝わってきます。

建築や都市建設は、単に建物を作ることだけではありません。 そこには、その時代の社会、制度、暮らし、そして国家が描こうとした未来像が表れています。

この本は、モンゴル人民共和国時代に、都市や建設がどのように考えられていたのかを知るための 大切な入口になる一冊です。

モンゴル語版『Монголын архитектур ба хот байгуулалт』

二冊目は、モンゴル語版の Д. Майдар『Монголын архитектур ба хот байгуулалт: тойм』 です。 日本語にすると、「モンゴルの建築と都市計画:概説」という意味になります。

タイトルページには、 Редактор академич Ш. Нацагдорж とあり、編集者として академич Ш. Нацагдорж の名前も確認できます。

こちらの本は、黒地に金色の線画で建築や都市計画の図が描かれたカバーがとても印象的です。 高層建築、寺院建築、都市の平面図、伝統的な建築意匠が一つの表紙の中に組み込まれていて、 見ているだけでもモンゴル建築の広がりを感じます。

本体は緑色の布表紙で、そこにも金色で書名と建物の図が入っています。 黒いカバーと緑の本体、どちらも美しく、古書としての存在感があります。

目次から見える広い世界

このモンゴル語版の目次を見ると、内容はとても幅広いことが分かります。

住居建築、寺院建築、宮殿建築、墓や記念碑の建築、建築装飾と色彩、 古代都市、そしてモンゴル人民共和国時代の都市建設まで扱われています。

ゲルや住居。
寺院や僧院。
宮殿や記念碑。
古代都市。
そして社会主義期の新しい都市づくり。

特に興味深いのは、伝統的な建築と近代的な都市建設が、 同じ一冊の中に並んでいることです。

この本は、モンゴルの建築文化を一冊で広く見渡すことのできる資料だと思います。

二冊を並べて見る意味

ロシア語版『Строительство в МНР』と、 モンゴル語版『Монголын архитектур ба хот байгуулалт』。 この二冊を並べて見ると、同じ時代の建築・都市を、 異なる言語と視点から考えることができます。

ロシア語版からは、社会主義圏に向けて説明されたモンゴルの建設と都市づくりの姿が見えてきます。 一方、モンゴル語版からは、モンゴル自身の建築文化、歴史、都市計画をまとめようとする意識が感じられます。

二冊がそろっていることで、ノタック資料室の建築・都市資料として、 とても大切なまとまりになりました。

ノタック資料室の第一歩として

ノタックは大きな図書館ではありません。 けれど、こうして一冊ずつ資料を整理していくことで、 モンゴル語やモンゴル文化を学ぶ人にとって、小さな手がかりを残すことができると思っています。

古い本には、内容だけではなく、表紙、紙、文字、装丁、その時代の空気が残っています。 今回の二冊も、モンゴルの建築と都市を考えるだけでなく、 1970年代のモンゴル研究・出版文化を感じさせてくれる資料です。

これからも、ノタック資料室に集まった古書や資料を、 少しずつ記録していきたいと思います。

ノタック資料室で整理中の関連資料

今回紹介した建築・都市資料のほかにも、ノタック資料室には さまざまなモンゴル関係資料が集まりつつあります。

たとえば、1939年に日本で刊行された『外蒙古』、 1976年の『Япон–Монгол ярианы дэвтэр(日蒙会話)』、 モンゴル人民共和国時代の行政法、家族法、労働法、文化財保護法、 モンゴル語・文字に関する研究資料、塩湖や自然資源に関する本、 教科書、児童書、絵画資料などです。

一冊ずつ見ると小さな古本かもしれません。 けれど、分野ごとに並べてみると、 モンゴルの歴史、ことば、制度、都市、自然、生活文化が少しずつ見えてきます。

ノタック資料室では、これらの本を台帳に記録し、 表紙写真や書誌情報、短い解説を添えながら整理していく予定です。

本の姿をそのまま残す

これからは、写真だけでなく、本の表紙をできるだけ忠実にイラスト化して残すことも考えています。 古い本の表紙には、その本が生まれた時代のデザインや空気が残っています。

今回の Д. Майдар の二冊も、ロシア語版の茶色い布表紙、 モンゴル語版の黒地に金色の建築図案、緑色の本体、それぞれに違った魅力があります。

本の姿を大切にしながら、ノタック資料室の記録として、 少しずつ紹介していきたいと思います。

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ノタック資料室の古書リスト

ノタックには、古書店や古書市場を通じて少しずつ集まってきたモンゴル関係の古書・資料があります。 ここでは、建築、歴史、法律、言語、教育、日蒙交流など、現在整理中の資料を分野ごとに記録していきます。

整理メモ:
書名・著者・出版年は、表紙や奥付から確認できた範囲で記録しています。 未確認のものは、今後少しずつ追記・修正していきます。

1. 建築・都市計画

  • Д. Майдар『Строительство в МНР』
    ロシア語版。1972年。モンゴル人民共和国時代の建設・都市建設に関する資料。
  • Д. Майдар『Монголын архитектур ба хот байгуулалт: тойм』
    モンゴル語版。Улаанбаатар—1972。モンゴルの建築と都市計画に関する概説資料。
  • БНМАУ-ын аж үйлдвэрийн газар зүй
    モンゴル人民共和国の工業地理に関する資料。1973年頃。

2. 日本語資料・戦前日本のモンゴル関係資料

  • 『外蒙古』
    ア・カリニコフ著、服部麥生訳。生活社版。昭和14年、1939年発行。 戦前日本における外蒙古認識を知るための資料。

3. 日蒙交流・語学資料

  • Д. Алмаас『Япон–Монгол ярианы дэвтэр』
    『日蒙会話』。1976年、ウランバートル刊。 日本語とモンゴル語をつなぐ会話帳。
  • 『Preliminary Report on Mongolian Studies, 1975』
    京都大学文学部、Junpei Hagiwara 編。1977年。 日本のモンゴル研究調査報告。

4. 法律・制度・歴史資料

  • Б. Чимид『БНМАУ-ын захиргааны эрх』
    1973年。モンゴル人民共和国の行政法に関する専門書。
  • БНМАУ-ын гэр бүлийн хууль
    1973年。モンゴル人民共和国の家族法。
  • БНМАУ-ын хөдөлмөрийн хууль
    1974年。モンゴル人民共和国の労働法。
  • БНМАУ-ын соёлын дурсгалт зүйлийг хамгаалах хууль
    1974年。文化財保護に関する法律資料。
  • Ш. Нацагдорж『Халхын түүх』
    1963年。清朝支配期のハルハ史に関する資料。
  • 『Халх журам бол Монголын хууль цаазны эртний дурсгалт бичиг』
    1958年。モンゴル古法制に関する資料。
  • Ш. Сандаг『Монголын улс төрийн гадаад харилцаа 1850–1919』
    モンゴルの対外関係史に関する資料。

5. モンゴル語・文字・専門用語

  • 『Монгол хэл бичгийн зарим асуудал』
    1959年。モンゴル語の文字・正書法・表記法に関する研究資料。
  • 『Улсын нэр томьёоны комиссын мэдээ』各号
    国家用語委員会による専門用語資料。鳥類、獣医学、医学系用語などを含む。

6. 自然資源・地理・生活文化

  • Ш. Лувсандорж『БНМАУ-ын эрдэст нуурууд, тэдгээрийн давсыг ашиглах боломж』
    1973年。モンゴル人民共和国の鉱物湖・塩湖・塩資源利用に関する研究資料。
  • 『Хангай-Хөвсгөлийн уулархаг нутгийн олон жилийн цэвдэг чулуул...』
    1978年。ハンガイ・フブスグル山岳地域の自然地理・多年凍土に関する資料。
  • С. Баярсайхан『Хоол бэлтгэх арга ажиллагаа』
    1973年/1974年。調理法と食品加工に関する生活技術資料。

7. 教育・教科書・児童書・文学

  • Д. Чойжилсүрэн『Монголын сурах бичиг』
    1974年。モンゴル語教育・教科書資料。
  • 『Унших бичиг 2』
    読本・教科書資料。詳細は確認中。
  • 『Оюун түлхүүр 1967 №2』
    1967年。児童雑誌または子ども向け読物資料。
  • 『Дөрвөн цагийн уянга』
    1967年。「四季」に関わる文学・詩の資料。
  • 『Эв зүй』
    文学・読物資料。詳細は確認中。
  • 『Хонзоо』
    児童文学または読物資料。詳細は確認中。

8. 切手・美術・図像資料

  • 『Katalog der Mongolischen Briefmarken』
    1973年。ドイツ語によるモンゴル切手カタログ。
  • ゲル内部を描いた油絵
    ゲル内の家具、皮、生活道具などが描かれた絵画資料。
  • モンゴル女性像の水彩画
    民族衣装や人物表現を知るための図像資料。
  • 草原・ラクダ・ゲルの水彩画
    草原生活の風景を描いた絵画資料。
  • 騎馬狩猟図 / Эртний анчид 系図像
    古代の狩人を題材とした美術・民俗図像資料。
今後の予定
これらの資料は、今後一冊ずつ表紙写真・書誌情報・短い解説を添えて紹介していきます。 古い本の姿をできるだけそのまま残すため、表紙を忠実にイラスト化した資料カードも作成していく予定です。